永訣の朝

 門井慶喜の「銀河鉄道の父」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説作家、歴史小説家である。本書は、生涯夢を追い続けた宮沢賢治の生涯を、彼を支えた父親政次郎の視点から描いた作品であり、2018年第158回直木賞受賞受賞作である。
 岩手県花巻で、先代の喜助の時代から質屋を営む宮沢家の当主である政次郎は、尋常学校の成績はトップクラスだったが、喜助の「質屋に学問はいらね」という信念のため、進学せずに家業を継いでいる。喜助は、質屋を開業することにより、没落した宮沢家を再興した人物であり、息子の政次郎が質屋以外に関心を向けることを嫌った。実直な政次郎は熱心な浄土