群れとなり空行くトンボ見上げつつ

 あきつ湧き宙にとどまる地獄谷  欣一

 あきつ羽の光りつめたし菊畠  内藤吐天

 幼子の高さで見つむ蜻蛉かな  谷口桂子

  序幕から蜻蛉が飛んで村芝居  高澤良一 素抱

 とどまればあたりにふゆる蜻蛉かな  中村汀女

 干草を掻けば青さや山蜻蛉  大橋櫻坡子 雨月

 月の前蜻蛉すぎてまだ暮れず  鈴木花蓑

 極上の空より殖ゆる蜻蛉かな  挟土美紗

 止る場所いつも探してゐる蜻蛉  山内山彦

 赤蜻蛉二尾すいすいと皿の絵に  アロマ

 夢のごと舞ふ蜻蛉や雨戸くる  原石鼎 花影以後

 大仏にとまらんとする蜻蛉かな  河野南畦