栗拾い子等長靴で毬を踏む

 栗拾ふ栗鼠の歯型のつくものも  田中佳嵩枝

 栗拾ふ深山の中の林かな  尾崎迷堂 孤輪

 栗拾ふ声か朝戸に風の音  及川貞

 栗拾ふ天地に母の老い深し  原裕 青垣

 栗拾ふ両手のほかに何もなし  佐土井智津子

 栗焼くと炉中のを拡げけり  西山泊雲 泊雲

 栗焼くやまこと淋しき山住ひ  高橋淡路女 梶の葉

 栗焼く香ただよへば船点し合ふ  子郷

 栗山にひつそりとゐる懸巣かな  皆川盤水

 栗むいて遠野語りとなりにけり  秦 孝浩

 栗むいて慈母観音のごとき夜を  中山純子 沙 羅以後

 栗むいて食べたる跡や猪の垣  細見綾子