『裏酒場ひとり語り ~惚れ薬~』

もう、すっかり秋だ。
あんなに暑かったのに、外も、心も、すっかり秋だ。
今夜は、カウンターに、コップ酒がひとつ。 たまに来るいつもの人も、まだ来ない。
いつ来るかわからないから、今夜も、来ないかもしれない。

昔、これは、惚れ薬だよと言って、私の前に、差し出した人がいた。それを一気に飲んで、私は、その人に惚れてしまったような気がする。あの不思議な店は、まだ、あの街にあるだろうか。
いつか、行ってみたい気もするけれど。

あと少しで、惚れ薬がなくなるという時に、ドアが、静かに開いた。
『一緒に、飲みたくなって』
何げない、一緒にと言う彼の言葉が、うれしかっ