梓澤要「荒仏師 運慶」

 物語は長岳寺の阿弥陀三尊像の玉眼を父・康慶が息子・運慶に見せるために連れていくところから始まる。運慶は恐れながらも玉眼の美しさの魅力に魅せられるが、玉眼を生み出した仏師は狂乱のあげくみずから首をくくってしまったという不吉なエピソードについても聞かされる。このエピソードは美と狂気の危うい関係を暗示しており、運慶の中にも美を追求する暗い情念が迸っていることを象徴している。

 若き運慶は父・康慶から円成寺からの依頼の大日如来像の制作を指示される。しかし、運慶の内なる情動が求める美は形を成さず、焦燥ばかりが募る。運慶は美の肉体表現そのものと感じられる白拍子の