買い物してきたものを玄関に置いて、ゴム長に履き替えた。水やりだ。今年になって全くと言っていいほど雨が降らない。
一秒でも早くソファーに横になりたいが、そうしたらもう二度と起き上がれないことがわかっている。それに、体には心地よい疲労感とでも言いたくなるような充足感が残っている。
仕事のある日は朝の6時半に家を出る。まだ薄暗い。坂道を登り切って少し行った辺りに、婆様の姿がある。ゴミの集積場辺りを掃いているのだ。
私は自分の家の前しか掃いたことがない。
バス通りに出る。かなり明るくなっている。今度はあの爺様だ。白いビニール袋と大きなピンセットのような
連載:年をとるのも悪くない