保阪正康著「田中角栄と安倍晋三」を読む(最終回)

「田中角栄と安倍晋三」(昭和史でわかる「劣化ニッポン」の正体)
ー「夏の暑い盛りに明治天皇が崩御になりました。その時私は明治の精神が天皇に始まって天皇に終わったような気がしました。最も強く明治の影響を受けた私たちが、その後に生き残っているのは畢竟時勢遅れだと感じ烈しく私の胸を打ちました」(漱石の『こころ』の主人公である先生の言葉)
 その明治の精神とはいかなるものか。
 江戸時代に培った生活倫理や規範を近代化していく日本社会の中にあっても、その骨格を残すべきだ。私たちは剛直や実直、さらには自己練磨の姿を貫くべきだ、私は考えている。漱石はそのことを文学に託