連載:年をとるのも悪くない

「後悔のない人生なんてない」

外に出るとちょうど彼女がやって来たところだった。家の鍵は持っているのだろう。私は走り寄った。

彼女は遠く九州の家を売り払い、千葉県に住む娘の家の近くに引っ越して来た。

ベビーカーにお孫さんを乗せた彼女とよく会う。保育園からの帰りだ。お爺ちゃんが車に乗せていることもあるし、お孫さんを抱っこして蕩けそうな顔して歩いていることもある。保育園の送迎以外にどこまで娘さんの家事を手伝っているのだろう。

「洗濯物を娘は家の中に干して仕事に行くでしょ。天気がいい日は外に出すの。でも、娘が帰って来る頃にはまた元通りに家の中に入れるのよ。ご飯?ううん、余計なことはしな