桜木紫乃さんの描く世界

直木賞作家で地元出身の桜木紫乃さんが書いたラブレスを読んだ。

冒頭から暗いシーンが続き、これは私向きでは無いかもと思いながら読み進むうちにどんどん引き込まれていった。

歌が好きでバスガイドを夢見ていた少女が貧しい家庭の事情でその夢を断たれ、歌を捨てきれずに飛び込んだ演芸一座と行動を共にし、一座が解散した後の放浪。

子供を産み、オトコに裏切られ故郷にも背中を向けられた女がミシンを武器に懸命に生きる姿に涙腺が弛んだ。

意識が朦朧とする病室を最後に尋ねてくれたのは、ついに彼女とは世帯を持てなかったが彼女を本当に愛してくれた男だった。

横たわる彼女の手