連載:旅1

「何も考えなくても体が動く」:オカンの東北一人旅⑮

いろいろな匂いがする。決していい匂いではないが、直に慣れる。

高速バスは新宿まで行くが、私は千葉県民。王子駅で降りた。

金曜日の夜八時過ぎ、都会はこんなにもうるさいのか。大声で話しているのは無分別な若者かと思いきや、スーツ着た立派な男性たち。

秋葉原で乗り換えて座れるはずないが、空間ができている方に進んだ。今日はツイている。一人分空いていた。立っている人がいる。誰も座らないのなら甘えよう。

誰も座らないはずだ。床にポタージュがこぼれ、ご丁寧にも小さな缶が置いてある。

三人掛けに若い男女が座る。髪を綺麗になでつけスーツ着た若者は、バッグ抱えて熟睡