鵲の花押

 岩井三四二の「政宗の遺言」を読了した。著者は時代小説作家であり、松本清張賞や中山義秀文学賞等を受賞している。本書は、「最後の戦国武将」と呼ばれる仙台伊達藩主伊達政宗の最晩年の、死に臨む日々の姿と、彼が辿った謀略と戦闘の日々の思い出を綴った歴史小説であり、新参の小姓瀬尾鉄五郎が見た政宗最後の日々と、老齢の大番士佐伯伊左衛門が語る政宗の思い出が交互に描かれている。
 物語は、寛永13年(1636)1月、70歳の政宗は桃生郡十五浜で名残りの鹿狩りを愉しみ、江戸定府の藩士の息子の17歳の鉄五郎は、初めての鹿狩りに臨む。政宗は山の神の使いである白鹿を仕留め、感慨