「岩井三四二」の日記一覧

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岩井三四二 の 津軽の髭殿

★3.4 津軽を統一した大浦右京亮(弘前藩初代藩主・津軽為信)の生涯を描く。出自については諸説あるようだが、ここでは久慈郡(岩手県北部)を領する久慈治義の庶子としている。 久慈氏はもともと南部氏の一族で、当時は上ノ久慈家と下ノ久慈家に別れていたが、久慈治義は上ノ久慈家。南部氏の津軽進出で下ノ久慈家が大浦城主となっていた。 治義の後継である信義にうとまれた側室(右京亮の母)は幼い右京亮…

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岩井三四二 の  「切腹屋」

★3.4 「むつかしきこと承り候」など公事ものには定評ある作者、今回は地方が舞台の公事。藩の堺を接する2つの村の市にまつわる揉め事。 藩をまたがる訴訟事は江戸の評定所に持ち込まれる。既にある市の3里以内に新たに市を開いたことで、法に触れると取りやめを訴えられた信濃山手村、不利な公事に勝とうと頼ったのが公事師の辰次。辰次には親の残した借金を毎月2両ずつ返済しなければならず、この公事を受けたが…

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岩井三四二 の 田中家の三十二万石

★3.4 近江国浅井郡三川村の百姓から筑後32万石の大大名になった田中久兵衛吉政の生涯。前半の泥臭い話が面白い。この作家の得意なところでもある。 物語は久兵衛の16歳から始まる。僅かの田を耕すも、ほとんどを年貢にとられてやっと一家が生きている状態に見切りをつけて武士になろうと決断する久兵衛。 徐々に頭角を現す久兵衛は、秀吉の小谷城攻めでその傘下に。以後は秀次時代の家老職、関ヶ原の東軍選択と窮…

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鵲の花押

 岩井三四二の「政宗の遺言」を読了した。著者は時代小説作家であり、松本清張賞や中山義秀文学賞等を受賞している。本書は、「最後の戦国武将」と呼ばれる仙台伊達藩主伊達政宗の最晩年の、死に臨む日々の姿と、彼が辿った謀略と戦闘の日々の思い出を綴った歴史小説であり、新参の小姓瀬尾鉄五郎が見た政宗最後の日々と、老齢の大番士佐伯伊左衛門が語る政宗の思い出が交互に描かれている。  物語は、寛永13年(1636)…

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久々の毛利元就 岩井三四二 の 天命

★3.5 永井路子の「山霧」から27年、NHK大河から22年、久々の毛利元就物語。 当時よりずいぶんと研究が進んだようだ。最近のレーザー測量技術で郡山合戦の陣地跡が鮮明になってきた(NHKサイエンスZERO)。 月山富田城跡もずいぶんと整備されている。尼子氏との最後の攻城戦(第二次月山富田城の戦い)に5年もかかった城は、歩いてみるとその峻険さがよくわかる。 陶との厳島合戦では村上水軍が味方…

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岩井三四二の「天魔の所業、 もっての外なり」。

★3.3 室町8代将軍・義政の正室・富子の半生にからむ7つの短編で構成した物語。 夫・足利義政として、山名宗全の立場で、息子・足利義尚の心情として、将軍をすげ替えた変人・細川政元との連携など。 わかりにくい時代を断片的に描いているだけに、全体を俯瞰することにはならないが、作者は時代の変化の瞬間を捉えようとしたのかも。 富子が立場を利用して資金増殖の才能を発揮したことが最近の通説となっている…

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岩井三四二の「絢爛(けんらん)たる奔流」。

★3.8 一気読み、職人事業もの。 江戸初期、京で後藤家、茶屋家に並ぶ商人の角倉(すみくら)家の主・了以は朱印船貿易と土倉業の財を背景に新たな事業に乗り出す。 大堰川(保津川)の開削通船事業に成功すると幕命による大井川、天竜川の通船事業に。 そして最後は後世に名をなす高瀬川の設置事業に取り組む。 商人であり算法家、現場監督でもある、採算を睨みながらも己の夢にかける了以と、家運を気にかけな…

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岩井三四二の「情け深くあれ 戦国医生物語」。

★3.3 英俊は15里ほど西にある丹波国多紀郡の八上城下から京に出て、曲直瀬道三のもとで医術を学んでいる。 時代は信長が足利義昭を奉じて上洛した直後から物語は始まる。 24歳の英俊は10年前に起きた八上城下で起きた酒井家と吉川家の闘争事件を引き摺っており、事件で家族を失った英俊は許婚者であった吉川家の娘・菊とも離れ離れになった。 京で師の代診を勤めたりと忙しい毎日に、過去の事件の真相や、菊…

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岩井三四二の「太閤の巨いなる遺命」。

★3.5 彦九郎と陸之介は小西家の船手衆として戦ってきたのだが、関ヶ原の敗戦を機に博多で商人となった。ところが、陸之介がシャムのアユタヤで消息を絶ってしまったのだ。 アンダマン海にあるキシャンガ島に日本のサムライが集まっているという情報に、島に潜入した彦九郎が見たものは一万五千石積みの巨大なガレオン船だった。太閤の遺命で建造中のもので、秀頼支援のため大阪に向かうという。 インドのゴアを拠点と…

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岩井三四二の「三成の不思議なる条々」。

★3.2  内容は関ヶ原から30年経った江戸時代、12人の下級の関係者に関ヶ原の合戦に関しての聞き込みを試みたスタイル。 うーん、新説、珍説を期待したのだけれど、これといって新しい材料が出てこなくて残念。唯一作者が着目した「三成は予め作ってあった陣地に移動した」ということぐらいか。 岳宏一郎の『群雲、関ヶ原へ」を読んだ者にとっては物足りない内容といっていい。 「なぜ大垣城から関ヶ原に移った…

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平安時代に遡ると遺伝子は1/8兆。

岩井三四二の面白い短編集「サムライ千年やりました」。 8編の短編からなるが、現代(1988年)から遡って先祖の物語を描いていく。最も古いのは、桓武帝の曾孫である高望王が平姓を賜って、上総介を拝命し関東に赴任(898年)してのちの物語。 1代を25年として計算してみた。(1988−898)/25≒43 43回代替わりしたことになる。 サムライの世界では、父系の先祖しか表さないが、DNA的には…