渡辺淳一著「神々の夕映え」を読む

「神々の夕映え」 渡辺淳一著 講談社
1978年5月20日発行
ー別に、私は憎んでいるわけではなく、不気味に思っているだけだった。自分が助けた子どもが、毎年着実に大きくなっていくという実感が怖いだけだった。
 私は少年の年賀状をもう二度と見たくなかった。
「しかしこんな狭い町でも、いろいろな人生があり、いろいろな死に方があるものですね」改めてアーミイがいった。それはたしかに彼のいうとおりに違いなかった。一片の死亡通知のなかにも裏を探ればさまざまな生き方と死に方が隠されていることだけはたしかだった。
 上部癌は手術しにくく転移しやすい。
 私は夫人が早く死