四代の家族が紡ぐ物語

 三上延の「同潤会代官山アパートメント」を読了した。著者は、ホラー系統のライトノベル出身の作家であるが、ビブリア古書堂の事件手帖シリーズでブレークしている。本書はノンシリーズで、日本最初の近代集合住宅「同潤会代官山アパートメント」に住んだ一家の、四世代に亘る年代記である。
 「プロローグ 一九九五」:死を目前にした竹井八重の意識は、長年住み慣れた同潤会代官山アパートメントに戻ってくる。彼女を迎えたものは長年連れ添った夫の光生ともう一人の若い女性の魂だったが、その若い女性はそこにはいるべきではなかった。彼女は思わずその女性に声をかけていた。
 「月の沙漠を