坂岡真 の 一分(いちぶん)

★3.5 かつて「うぽっぽ同心シリーズ」を読んだ作家だが、単行本でこんなものも手掛けるのか。幕末青春もの。

物語は天保10年(1839年)正月、5万石の丹波篠山藩で始まる。下級藩士に生まれた小柴陽太郎は、伯父から藩の密命だとして直訴を企てる農民を討てと命じられる。だが、相手は何と友の清七だった。

脱藩した陽太郎が拾われたのは灘の酒造家・日野家だった。篠山からは毎年、多くの農民が灘へ杜氏として出稼ぎに来ている。樽廻船で江戸へ向かうことになり、新酒番船に挑むことになる。

灘の酒造や樽廻船での航海などの薀蓄満載な興味深い物語。だが、藩内の抗争や大坂の暗黒