澤田瞳子 の 月人壮士(つきひとおとこ)

★3.3 「月人壮士(つきひとおとこ)」とは、月を擬人化し、若い男に見立てていう語らしい。海と山の対立を描く〈螺旋〉企画の1冊(もののふの国も同)。

聖武天皇の苦悩を、藤原氏に取り込まれんとする皇統を描く。首(聖武)の母は藤原宮子であり、皇族以外の臣下を母とする者は全き帝ではありえない。すべての苦悩の原点でもあった。それゆえに、病に侵された母に40年もの間会わず、遷都を繰り返し、仏教に傾倒し最後は毘盧舎那仏建立へと走ってしまったのだと。

中臣継麻呂と銅鏡を探偵役として、9人のインタビュー記事から構成する。聖武が死に際しての遺詔は、阿倍(孝謙天皇)の皇