『風喫茶』

『風の店だって』
『しゃれた名前ね』
『入ってみる?』
『いや、今日は、やめとく』
『そうだね、今度の楽しみにって感じ?』
『そう、またふたりで、この坂を上ってくる楽しみの為に、とっておくわ』
『俺たちに、今度もあるってこと?』
『今日みたいな風が吹いていたら』
それっきり、彼女は、何にも言わない。
風が、彼女の前髪を、静かに揺らす午後が、過ぎてゆく。

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