10月の俳句帳(78)令和元年10月30日

1)床の間の紅葉一枝奥茶室

2)里の夢零余子飯(むかごめし)炊く煙(けむ)竈(かまど)

3)ノクターン(夜想曲)身に入(し)むチェロの咽(むせ)び聴く

4)秋桜(コスモス)が心に沁みるさだの歌

5)古文書の初歩につまずきそぞろ寒

6)槌音(つちおと)の秋空遠く響く朝

7)手の冷えやもろ手をかざす炉火恋し

8)過疎廃居進む解体蟲集(すだ)く

9)山水の掛け軸余白秋高し

10)山水の麓(ふもと)零(こぼ)るる萩の絵図

11)声明(しょうみょう)の流る参道律の風

12)居酒屋で出会ふ里友衣被(きぬかつ)ぎ

13)萱の軒夕陽に燃ゆる吊し柿