これが冬だ。風は強いし空気は澄んでいる。
夜寝付けない日がこれで3日。連続ではない。眠れなかった日の翌日はよく眠る。
枕元のスタンドに手を延ばして灯りを点ける。本を読む。本を読んでいる間はその世界が私のリアルだ。
自身の事を忘れていられる事をやろう。その一つが本。
どうも何をしても楽しくない。胸の奥に氷の塊を抱いているような辛さがある、なんて呟いては笑っていたが、この年で、この現実で、毎日楽しくて充実感がある人間なんていやしない。
本の次は走ること。
午後になって、以前一人で歩いたたんぼ道に向かった。前から来る婆様は帽子を目深に被りマスクをし