連載:オカンの一人歩き

「信じられない!」

犬だ。男性の足元に犬がいる。どこからどう見ても爺様犬としか言いようがない。情けないような、何とも哀愁を帯びた目をしている。

男性は片足で犬の鎖を踏みつけている。犬が動き出しそうな気配は全くない。犬は男性の両足の間に伏せをしている。

私は総武線の快速に乗りたかったが、近所の停留所から出たバスは生憎各駅停車しか停まらない駅行きだった。

バスを降りたら前を歩く女性が何かを落とした。二カ所が折れ曲がった杖だった。一体どうやって真っ直ぐにするのだろう。後ろにピタッと付いた。

女性が拾い上げると、杖は自然に真っ直ぐになり、女性はそのまま歩き出した。

当然エ