さんが書いた連載オカンの一人歩きの日記一覧

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「久しぶりに自転車に乗った」

馬だ。もうかなり来た事になる。この馬を見る度複雑な気持ちになる。柵で囲まれた面積は馬一頭なら狭くはないのだろうが、学校の運動場には程遠く走っている姿を見たこともない。たった一頭。馬は静かにこちらを見ている。 何度か自転車を停めた。思いがけず風が強かった。畑の土煙が真横に流れて行く。 手前の畑には後ろに手を組んだ腰の曲がった婆様が歩き、近くには男性がトラクターを操っている。二人とも帽子…

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「無駄遣い」

また使ってしまった。1万円。固く決めた「形として残る物は買わない」は守れたが、浪費には違いない。 一人でぶらっと成田山新勝寺に行った時、骨董屋に入り、客は私一人だったから主人と喋った。骨董品=高価だと思っていた私には、どれも驚く程安かった。小太りの主人はよく喋ってくれて感じもよかった。「褒める客は買わない」を覆し、買う事にした。 変わった形の陶器の花瓶。3500円。3000円にします…

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「自然は迷わない」

「ドーン、ドーン〜」 本堂は天井も高く、人もかなり座っているが、全体が振動する迫力だ。最初はただその大きさに驚いていたが、段々心配になった。心臓大丈夫か。 こう見えても長い間ニトロを持ち歩く心臓病を持っていた。多分に精神的なものだったと思う。 「ここ、いいですか?」 隣の席にオバサマが座る。おいおい、そこにはコロナ対策で「おもいやり席」と書いてあるではないか。まあいい、迷える子羊…

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「貧しい日本人」

いろいろな銘柄は置いてない。「菊水」のみ。そこに(熱燗:常温)とある。熱燗は嫌いで冷やして飲むのが好きだが、「常温」とわざわざメニューに書いてあるのは初めて見た。決めた。 毎週の娘宅訪問が復活している。土曜日の昼間、孫達が保育園から帰るまでの時間を有効活用する事にした。言われていない家事をやってはならぬと先輩諸氏にも言われている。 先ずは『ランチ酒』を読んで掻き立てられた思いを叶…

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「一人歩き解禁」

映画が始まるまでの一時間をウォーキングしよう。錦糸町駅を背にして歩き出した。 スカイツリーに向かう形に流れている川に沿って歩く。道路工事の爺様たちや立ち話している婆様達の姿を、鉛筆のような塔を背景に見るのはいいものだ。 住宅とコンクリートで、土など何処にも見えない東京の下町。家々は敷地とアスファルトの狭い空間に植木鉢を並べている。 交番にも手入れの行き届いた鉢植えが沢山並んでい…

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「東京解禁」

「バアバ、競争しよ」 「もう走れないよ。○○クン、あそこまで走ってみて」 直に5歳を迎える孫は幼児体型を脱したばかりか、走るフォームが奇麗だ。 「○○クン、保育園で走り方、習ったの?」 「習ってなんかないよ。自分で」 「自分で」。ホームの婆様達はこちらが手を貸すと忽ち甘えて来るが、子供は逆だ。何でも自分でやりたがる。 上野の東京都美術館で開催されている『ボストン美…

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「背中が痒くて」

「写真撮っていい?」 「いいよ」  痒みは収まると分からなくなるから、写真を撮っておくと病院に行った時便利だと言う。 昨日早朝から娘宅に来ている。最近背中が痒くてついつい掻いてしまっていた。それを娘に見てもらった。 テレビで帯状疱疹が増えていると知り、気になった。同僚に話すと加齢かもと言う。免疫力も下がるか。 スマホ様にも聞いた。掻いてはいけない。保湿。刺激を与えない、入浴時のザラザラタ…

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「花がお好きなんですか?」;高尾山

「花がお好きなんですか?」 見知らぬ女性に声を掛けられた。それから女性はそこに珍しい花があるんですよ、と私と一緒に引き返した。 朝起きると雨の音がした。寒いと思った。寒い?うってつけではないか。 幸い雨は小降りになった。登山靴の試し履きに行こう。多少鼻水は出るが、思い立ったが吉日。しっかり防水してくれるのか。速乾性の下着の具合も知りたい。高尾山なら一人でも安心だ。 高尾山口駅に着くと雨は…

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「一人で歩く」

朝出勤すると、同僚が私の手を引いて、小声で言う。バアサマが体調を崩し今救急車を呼んだところだ。 私は直ぐに他の入居者対応に回る。日常的に行なっているバイタルチェックを代わりに続ける。 直ぐに救急車は到着し、バラバラと救急隊員が入って来る。直ぐに処置する必要がある時にはドクターを乗せた救急車がもう一台来る。 介護施設に入居するような方は、いつ何が起きるか分からない。入院しそのままサヨナラにな…

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「雨だから行く」

ええ?!君達そっち?私が歩くというのに中学生がケーブルカー? まさかね、もしかすると先生達、雨だからケーブルカー乗り場の建物の中で人数チェックするのか?尾行する67歳。 先生らしき人は見当たらなかったので、登山口に戻る。さっきは誰もいなかったが、私より高齢らしき女性の二人連れが前を歩いている。これだから日本の高齢者は20年前より10歳若返っているという結果が出るのだよ。 登山道は川になって…

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「山百合見るなら高尾山」

左手に建物が見えて来た。まさか。ケーブルカーの駅ではあるまい。そうだ。早い。前回より年を取っているのに、疲れない。 ところがそこからがキツかった。緩い坂を行く女坂か、急峻な階段を登る男坂かの分岐点では、当然女坂を行くつもりだったのに、男坂を一人で降りてきた女性と目が合った。8~90代の登山姿が可愛らしい女性て、私に笑顔を向けている。はい、頑張って!と言っているように。男坂を行かない訳にはゆかぬ…

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「いいものを見た」

一度通り過ぎてから停めた。若い女性が、積み上げた大きな箱に入ったイチゴを透明なパックに詰め替えている。大粒だ。 総武線の線路脇の、建物と建物の間に残された畑にビニールハウスがある。 自転車を停めて近づくと、イチゴのいい香りがする。スーパーだとこんな香りはしない。私は孫にちょうどいい手土産になると買う気になった。 隣の直売所に行くと数箱並んでいて「千円」とある。2パックで千円だと思ったら、1…

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「恋愛映画を見た」

行ってみよう、このまま家にいたら太るだけだ。 午前10時の予約は、30分程度の遅れで診てもらえた。一年前に予約していた内科受診だ。大腸にある脂肪腫という塊を経過観察している。 内科医は見つかった時と去年の画像を比べると全く大きさは変わらない、今回はMRをやってみましょうと言う。検査の日と結果を聞く日を決めただけで、無罪放免となった。 会計をする場所にも普段と変わらず人が大勢いた。去年の緊急…

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「あるある」:東京国立博物館

トイレを済ませて壁際のソファーに座った。グッズ売り場のすぐ側だ。まだ買うのは早い。 ふと隣を見た。スカーフが一枚置いてある。昨日私が病院でコートを置き忘れた事とあまりにも似ていて、笑ってしまう。持ち主は直ぐにトイレから出て来るだろう。 誰も来なかった。そのまま席を立った。もう一度見たい。 コロナ禍では二度目の東京国立博物館。第一波より感染者は増えているが、縮こまってしまうと先行きが見えな…

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「自分に驚いた」

前回の続き。大倉集古館で横山大観も素晴らしかったが、名前を知らない画家が描いた『さやえんどう』が強く心に残った。 派手さとは無縁。何種類ものくすんだ緑色で画面全体にさやえんどうを描いている。並木瑞穂という画家だ。色は地味だが生命力のようなものを感じる。しかも身近な植物で。 他の画家の絵も皆よかった。日本画は線が厳しい。画面に緊張感があり、無駄がない。 画家は描く事が好きで好きで堪らないのだ…

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「別にお前に会いに来たんじゃない」

あっ、この横に長い四角い建物は見た事がある。これがホテルオークラだ。この近くに間違いない。 聳えるビル群、ビシッとした服装の男女しか歩いていない歩道を、リュック背負い、辺りをキョロキョロ見回すオカンは、ヘラヘラ顔で進む。もうサンデー毎日の我が身を恥じる事など全くない。 グーグル様にはお世話にならずとも見つけてやる。テレビで見た自転車一人旅のゴローさんのルールの一つにあった、「スマホを見ない」…

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「シニアの3Kの中でも1番厄介なK」

シニアの恐れる3K「健康、経済、孤独」のうち、一番厄介なのは「孤独」だ。 梅雨空が続いている。こんな日に家にいると危険だ。 自転車だ。⚪⚪川に沿って海側に向かおう。時々小雨程度に落ちてくるから走る人歩く人は少ないが、みんな一人じゃないか。大型の鳥、バンだろうか、それだって一羽だ。川には30センチはありそうな亀まで一匹。 幕張などと無謀な事はもう言うまい。京成線と平行した道の舗道を走る。谷…

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「『一人は気の毒』なんて思い込み」52.8

今まで息子に連れて行ってもらうしかなかった「道の駅八千代」に、自力で行く。それもバイクじゃなく、自転車で。 一度目は迷った。二度目はたんぼ道を楽しんだ。三度目は更に足を延ばして海を目指そうと、川沿いを走ったが、途中で道がなくなってからやはり迷った。 随分内陸部で「幕張の海まで行きたいんですが」と、何人にも聞いた。私は聞くのが楽しいのだが、聞かれた方は困っただろう。 グーグル様にも聞いた。地…

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「まさかまさかの」

三日間連続勤務した翌朝、目が覚めなくなった。またもやジョギングクラブに間に合わない。 仲間とは走れないが、このまま一日運動しないのはよくない。お腹周りの肉が簡単には落ちないレベルになっている。 走る格好をして外に出たが、走る気は無い。ジョギング用のリュックにスマホとペットボトルを放り込んでいた。 たんぼ道に降りた。農家の庭先に縮こまったマーガレットを見つけた。暖冬とはいえ、冬は冬だ。スマホ…

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「65歳以上は無料です」

仲間と市民の森を走る。人が見たらそれで走ってるつもり?と言われそうなスピードだ。 先日久し振りにジョギングクラブで一般道の舗道を走ったら、足の付け根に軽い痛みがあった。 市民の森は大地だからふかふかで、鳥の囀りも、季節季節の匂いもある。 クラブをやめてここを走る仲間が数人いる。私もここだけでいいかな。 帰りに公園に寄る気になった。こんな寒い時期にもチューリップが咲いているはずだ。 外国…