無調の音楽

 谷津矢車の「廉太郎ノオト」を読了した。著者は歴史小説、時代小説作家である。本書は、明治の日本で天才を謳われながら、結核のために夭折した瀧廉太郎の短い青春を描いた物語である。
 廉太郎は明治12年(1879年)8月24日、内務官僚の瀧吉弘の長男として誕生するが、瀧家は江戸時代に、豊後国日出藩の家老職を代々勤めた家柄であり、吉弘は跡継ぎの廉太郎に、その家柄に相応しい将来を期待していた。
 廉太郎の10歳ほど年上の姉の利恵は、廉太郎に自分が好きな琴の手解きをし、彼と重奏することを好んだ。彼女は弟に音楽の才能があるこを認めたが、結核のために夭折しており、父親が