ウルジャ河の戦い

 北方謙三の「チンギス紀 (六) 断金」を読了した。著者はハードボイルド出身の作家であるが、先日完結した大水滸シリーズ等、最近は中国史を題材とした歴史小説が多い。本書は、ユーラシア大陸に拡がる大帝国の礎を築いた英雄チンギス・カンの人生を描いた物語の第六巻であり、テムジン(のちのチンギス・カン)がモンゴル草原を制覇する第一歩となる、タタル族を撃破する「ウルジャ河の戦い」が描かれる。
 タタル族の度重なる襲撃に怒った金国は、皇族の完顔襄を総帥に、大興安嶺を越えて四万人の軍勢を派兵する。しかし、歩兵主体の金国軍と、騎兵からなるタタル族の戦いは膠着に陥る。金国は