茶々の望んだ婿

 木下昌輝の「信長、天を堕とす」を読了した。著者は歴史・時代小説作家で、第92回オール讀物新人賞を受賞して作家デビューしている。本書は、神を目指したと言われる戦国乱世稀代の風雲児織田信長の人生を、「恐怖」と「強さ」をモティーフに、新たな視点で描いた歴史小説である。
 第一章「天下の野望」:馬廻衆を率いて上京した信長は、京の華美を見て、その地が己の強さを証明する場ではないと考え、目を東国の今川、武田、北条に向ける。信長は水野信元を誘い、彼の甥の松平元康(後の徳川家康)を内通させ、今川勢と積極的に対峙しようと画策する。果たして、今川勢が尾張に侵攻し、信長は馬