辻堂魁 の 縁の川 風の市兵衛 弐の4

★3.5 第弐部4作目。文政8年(1825年)を迎え市兵衛も41歳である。

北町奉行所定町廻り同心・渋井鬼三次の息子・良一郎が幼馴染の小春と大坂へ発ったらしい。突然のことだけに単なる欠け落ちではない。小春には幼い頃別れた姉がおり、大坂の苦界で命を終えた知らせが届いていた。

鬼しぶの頼みに市兵衛は大坂の堂島にある米問屋・松井に向う。そこは市兵衛が二十余年前に算盤を学んだ店、主だった松井卓之助は隠居してはいたが健在で便宜を図ってくれる。

15年前に3歳だった小春と12歳の姉・菊は、泉州佐野町の店が潰れ大坂新町の遊女屋に身売りされていた。小春は江戸の扇子