左馬助の湖水渡り

 谷津矢車の「桔梗の旗-明智光秀と光慶-」を読了した。著者は歴史小説、時代小説作家である。本書は、本能寺の変に至る明智光秀の後半生を、光秀の嫡男の明智十五郎光慶と、女婿の明智左馬助秀満の視点で描いた歴史小説である。
 天正八年、十五朗は武芸があまり好きではなく、どちらかと言えば芸事を好む文弱な少年であった。十一歳になった十五郎は、通常よりは早い年齢ではあるが、父親の光秀の命により元服し、光慶と名乗る。同じ頃、光秀の女婿の長岡与一郎(後の細川忠興)も既に元服していた。光秀は主君の織田信長に元服した光慶の目通りを願うが、何故か信長は光慶との対面を拒否する。一