安曇野に咲く花

 夏川草介の「勿忘草(わすれなぐさ)の咲く町で-安曇野診療記」を読了した。著者は、長野県の病院で地域医療に従事する現役の医師で、「神様のカルテ」により第10回小学館文庫小説賞を受賞し、作家としてもデビューしている。本書は、信濃大学医学部を卒業した後、松本市郊外にある梓川病院で研修を開始した新人研修医の桂正太郎と、彼を温かく見守る、同病院に勤務して三年目の内科の看護師の月岡美琴の、激動の日々を描いた連作短編集である。なお、ストーリーの展開とともに判るが、桂は花屋の息子で、花をこよなく愛する心優しい青年である。彼等が勤務する梓川病院は、地域の小規模な病院であ