悪魔を哀れむ歌  ~ゴルフ~

 スポーツに限らず、ぎりぎりの場面に立ったときに不思議なことが起こるときがある。それは理にそぐわないことで、他人からすれば取るに足りないどうでもいいことだ。ただ、当人にとっては忘れられない神懸り的な瞬間である。

 何十年も前のことだが、まだ二十代だったわたしは叔父の勧めでゴルフを始めた。最初は『ゴルフなんて』と馬鹿にしていたが、いざやるとすぐにはまってしまった。当時、板前だったわたしは朝早くに河岸に行き、ランチの当番のときはそのまま店にいて仕込みをして夜まで仕事だったが、当番ではないときは昼間にかなりの空き時間が持てた。その時間に練習場に通い、行けば相