「霜の降りる前に」ヘニング・マンケル著

大事件が発生すると、マスメディアが事件の背景や原因などをあれこれ掘り起こし伝える。そんな事件も20年の年月が過ぎると、歴史の中に埋没してしまう。

小説家はここからが出番だ。
松本清張、南條範夫は歴史を素材にして、ともあれば闇の中に埋まってしまったしまった事実から着想を得た新しいミステリを作り出す。「霜の降りる前に」も歴史から着想を得て、宗教界の動きを暴いた小説となっている。

刑事、ヴァランダー・シリーズのこの小説は1979年11月、南米のガイアナで918名もの人々が大量殺戮された人民寺院事件で、ひとりの男が生き延びたという設定だ。この男はアメリカで2