連載:日常1

「赤い雨合羽」

入り口に近づくと外が薄暗い。やはり日が短くなっている。

雨だ。いきなりの大粒の雨。日中も二度ほどあった。白くけぶる雨を暫し眺めたものだ。台風10号は日本列島を覆う太平洋高気圧のせいで真っ直ぐ北上した。

傘を差してスーパーに向かって来る人もいれば、差さずに走って来る人もいる。私は店先で雨宿りしていようかと思ったが、やめた。早く帰りたい。

バイクの座る部分の蓋を開けた。赤い色が目に入った。雨合羽だ。すっかり忘れていた。袖を通した。温かい。仲間の言葉を思い出し、勢いよくキックした。『雨に歌えば』の気分だ。

走り出したが、雨が目に入り痛くて走れない。両足