高橋克彦 の 風の陣 1~5

★3.5 東北の豪族の出身で唯一出世した(正四位上)実在の道嶋嶋足を使い、蝦夷の鮮麻呂を絡めて実にうまく奈良時代の後期を描いている。中心は奈良の政だが、常に陸奥の情勢を併記という形をとる。そして最後は奈良時代の末、作者が後の阿弖流爲の物語「火怨」につなげるためには是非とも陸奥の時代が必要だったのであろう。

1.風の陣 [立志篇]
平城京で警備の任につく陸奥出身の嶋足のもとへやってきた東北物部一族の息子・天鈴は出世の策を授ける。政の中枢にいる藤原仲麻呂と対抗する橘奈良麻呂、まずは坂上苅田麻呂に取り入り、次は仲麻呂に取り入ること。黄金発見で宝の地となった陸