四神に護られた女

 馳星周の「四神の旗」を読了した。著者は、ロマン・ノワール(暗黒小説)作家である。本書は、藤原不比等を描いた「比ぶ者なき」の続編であり、不比等の息子である藤原四兄弟(武智麻呂、房前、宇合、麻呂)と皇族である長屋王の壮絶な権力争いを描いた歴史ノワールである。なお、タイトルの「四神」とは青龍、白虎、朱雀、玄武のことであるが、ここでは安宿媛(光明子、後の光明皇后)を護る藤原四兄弟を意味する。
 物語は、藤原家の繁栄の基礎を築いた藤原不比等の死の場面から始まる。太上天皇である阿閇皇女(元明天皇)とその娘の氷高皇女(元正天皇)は、不比等により強大化した藤原氏の権力