機上より靄めく富士を鑑賞す



   「アロマ」の句


 コスモス咲いて仲秋の公園に

 蒼泥む公孫樹散り敷く裏庭に

 銀色の薄煌めく通学路

 朝早く切り通し抜け中学に

 秋刀魚焼く母の姿を思い出し

 鈴虫の音色豊かに大きくて

 教会の鐘風に乗り吹き下ろす

 赤蜻蛉群れて午後のホバリング

 飴色の月に漂う金木犀

 くちなしの香りに花を探しけり

 機上より靄めく富士を鑑賞す

   
   「高橋淡路女」の句


 高原や桔梗ゆゝしき濃紫

 羅漢寺の障子あきをり薄紅葉

 山坊や夜霧に濡るゝ大障子

 干傘や日に照らさるゝ萩のつゆ

 白じろと風わたるなり蕎麦の