西條奈加 の 心淋し川(うらさびしがわ)

★3.4 6つの短編。
根津権現の北に位置する千駄木町の一角に心町(うらまち)はある。幅2間ほどの心川があり、その両側に立ち腐れたような長屋が5つ。心川は澱み、流れはないように見える。どうやらかつて崖上の武家地が崩落した窪地に、吹き溜まりのように人が住みついたのが心町のようである。

物語は様々な過去を持つ住人が見せる僅かな川の流れのような出来事。印象に残ったのは「はじめましょ」根津権現で母を待つ7つの娘・ゆかに出会った男。ゆかの歌がかつての女とつながり・・。〈安穏河原〉を思い出した。「灰の男」は隠居して12年も盗賊を追う妻子を亡くした元同心、小屋に住む