門井慶喜 の 東京、はじまる

★3.3 日本銀行本店や東京駅丸の内駅舎を造り、日本の建築家権威のトップに居続けた男・辰野金吾の生涯。

唐津藩の下士の次男に生まれた金吾は辰野家の養子となり、工部省工学寮を主席で卒業する。物語は金吾が英国留学から帰国した明治16年(1883年)から始まる。あの悪名を残した鹿鳴館が師の英国人・コンドルによって建設中だった。

工部大学校教授に就任すると以後、日本の建築界に君臨し続ける。首都東京はかつては大名屋敷の広大な敷地に「疎」としか言いようのない空間。これをヨーロッパに倣い「密」の頭脳都市としなければならない。地震や火災の多い日本、強度と耐火からは煉