「門井慶喜」の日記一覧

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門井慶喜 の 「文豪、社長になる」

★3.5 文芸春秋を創設し、芥川賞・直木賞を作った菊池寛の生涯。 若い頃はあちこちの大学をふらふらと、金も無いのに、何をやりたいのかわからずというより、執筆業をやりたいが自信がなく、時事新報社会部記者として就職したのが実情のようだ。 『中央公論』への寄稿で「忠直卿行状記」や「恩讐の彼方に」などで脚光を浴び、次の新聞長編「真珠夫人」で売れっ子となる。若手育成の『文芸春秋』創立もその…

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門井慶喜 の 東京、はじまる

★3.3 日本銀行本店や東京駅丸の内駅舎を造り、日本の建築家権威のトップに居続けた男・辰野金吾の生涯。 唐津藩の下士の次男に生まれた金吾は辰野家の養子となり、工部省工学寮を主席で卒業する。物語は金吾が英国留学から帰国した明治16年(1883年)から始まる。あの悪名を残した鹿鳴館が師の英国人・コンドルによって建設中だった。 工部大学校教授に就任すると以後、日本の建築界に君臨し続ける。首都東京は…

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門井慶喜 の 銀閣の人

★3.3 ひたすら東山殿を造ろうとする足利義政を描く。 東山殿の構成要素は中心の観音殿、人との面会の会所、主の居住空間・常御所、主の持仏堂である東山殿、それと庭に池。 己の東山殿執着に影響した者として、北山殿を造り政を行った祖父・義満、6歳の時に同席した宴で赤松満祐に討たれた父・義教、正室であり金主であった富子をあげる。 特に住居の性格を持たせた東求堂の同仁斎は、孤独を愛する義政の境地であ…

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門井慶喜 の 銀河鉄道の父

★3.5 2017年/下、 第158回直木賞受賞作。気になりながらも覚悟の必要な作品だった。タイトルから見ればおそらく家族のことが語られるのであろうと。賢治が短命であったこと、なにより教科書で読んだ詩『永訣の朝』の妹が登場するにちがいないからだ。今の自分にはまだその時の鮮明な情景が浮かぶからである。 だが読む気になったのは、『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』がどうして生まれたのか、詩『雨ニモマケ…

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永訣の朝

 門井慶喜の「銀河鉄道の父」を読了した。著者は直木賞作家で、推理小説作家、歴史小説家である。本書は、生涯夢を追い続けた宮沢賢治の生涯を、彼を支えた父親政次郎の視点から描いた作品であり、2018年第158回直木賞受賞受賞作である。  岩手県花巻で、先代の喜助の時代から質屋を営む宮沢家の当主である政次郎は、尋常学校の成績はトップクラスだったが、喜助の「質屋に学問はいらね」という信念のため、進学せずに…

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「銀河鉄道の父」は前作をはるかに超えている

 右大臀筋は徐々に回復、明日で大丈夫だとは思うけど、一応明日までアウトドアは休み。11日はまた、三室山に登り、帰りは日向和田の「幸稔」に入ってみる予定で楽しみだ。  さて、今日は門井慶喜の「銀河鉄道の父」の感想。家人が直木賞受賞の本を買ってきたので、先に読ませてもらった。 「家康、江戸を建てる」の一年後の作品のようだ。いうまでもなく第158回直木賞受賞作である。「家康~」は内容は面白かったが…

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門井慶喜の「屋根をかける人」。

★3.5  2012年の4月、時代小説好きの散策オフ会を近江八幡で実施した。 その時見かけたメンソレータムの建物、それがこの物語の舞台だった(当時はまったくそんな知識はなかった)。 24歳の米国青年ウィリアム・メレル・ヴォーリズはここにやってきた。 キリスト教伝道者ではあるが、正業は滋賀県立商業学校の英語教師として赴任。 しかしその後の人生には紆余曲折が。1500もの洋風建築物を手掛け、…

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利根川の東遷

 門井慶喜の「家康、江戸を建てる」を読了した。著者は推理作家、歴史小説家である。本書は、関東に国替えとなり、江戸に入府した徳川家康の江戸の街の建設を支えた技術者達を描いた物語である。  天正18年(1590年)夏、後北条氏の小田原城陥落を目前にしたある日、徳川家康は豊臣秀吉から、後北条氏の領地であった関東八か国240万石を与えると言われる。しかし、その条件として、徳川氏の故地である三河を初め、家…

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門井慶喜の「ゆけ、おりょう」。

★3.3 龍馬と出会ってからのおりょうの半生。 物語としては龍馬が一方的に惚れ、おりょうとはうまく絡まないことが面白い。 おりょうが龍馬の考えていることや、やろうとしていること、心情というものに理解が及ばないことにもよる。 それがためか、龍馬のおりょうへの接し方に、時の浪士の覚悟のようなものを感じてしまう。 晩年におりょうが探され、世間の興味に晒されること自体も哀れである。 連れ添った…

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門井慶喜(かどいよしのぶ)の「家康、江戸を建てる」。

★3.5 家康の江戸入り後の城下町建設を5つの項目に分けて描く物語。 利根川東遷事業を伊奈家の手で、金貨鋳造事業を後藤庄三郎で、神田上水事業を春日与右衛門他の手で、石垣材料の伊豆切り出し事業を石切・吾平で、天守築造を大工・中井正清で。 いずれも興味ある内容で、中でも吾平の石の節理を読む能力の話や、正清が江戸中の壁に使用され始めた漆喰材料の石灰山を探す話などは面白かった。 ただ残念なのはいず…

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用命天皇の描いた油絵

門井慶喜の「東京帝大叡古教授」を読了した。著者は推理作家である。本書は、日露戦争期の騒然とした世相下で、熊本から上京した五高生阿蘇藤太が巻き込まれた大学教授連続殺人事件を描いた歴史ミステリーで、七話からなる連作短編集である。  第一話:明治38年の夏8月、熊本の第五高等学校生である本書の主人公は、夏休みを利用し、東京帝国大学法科大学(東京大学法学部の前身)の宇野辺叡古(うのべえいこ)教授を訪ねて…