夕茜稲田を渡る風の色 



 ぬきんでて稲よりも濃く稗熟れぬ  篠原梵 雨

 さざなみの滋賀の子まとふ美稲(みしね)の香  加倉井秋を 『風祝』

 つとめ日々はかどり愉し稲は穂に  岸風三楼 往来

 ゆふぐれの溝をつたへり稲の香は  静塔

 中学生朝の眼鏡の稲に澄み  草田男

 伊賀の子の受ければ弾む稲の束  殿村莵絲子 牡 丹

 稲穂垂れ実りの秋の香しさ アロマ

 引きまはす襖の外も稲屏風  立花北枝

 日ちりちり櫟葉かゝる稲の上  右城暮石 声と声

 朝すでに露天湯にこゑ稲熟るる  井沢正江

 志賀の里妹子の村の稲実る  西村雅苑

 緩やかに黄金波打つ