トイレを済ませて壁際のソファーに座った。グッズ売り場のすぐ側だ。まだ買うのは早い。
ふと隣を見た。スカーフが一枚置いてある。昨日私が病院でコートを置き忘れた事とあまりにも似ていて、笑ってしまう。持ち主は直ぐにトイレから出て来るだろう。
誰も来なかった。そのまま席を立った。もう一度見たい。
コロナ禍では二度目の東京国立博物館。第一波より感染者は増えているが、縮こまってしまうと先行きが見えないだけに身動きできなくなる。マスクをしていない人など見当たらない静かな総武線に乗り込む。
前回の「着物展」は何一つ心に響かなかった。東京から人が消えていて、その
連載:オカンの一人歩き