連載:心の歌

冬の恋

  
それは思うだけで涙が出る様な

とても優しい恋だった

誰にも話さず二人だけで育てた

とても密やかな恋だった



どうしてなんて言葉がこれほど似合う別れには

たぶんもう二度と出会う事などないだろう

満ちた潮がやがて引いて行く様にとても自然に

時の流れの中で逝った恋

両手で抱えた砂が指の間から流れ

何も残さず風に吹かれる様に

季節に追われて逝った恋



ふと君の笑い声が聞こえた気がして

思わず振り返った初冬の街で

琥珀色に暮れ行く並木道が

突然にじんでこわれた

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