角田光代「八日目の蟬」

 ストーリーはいきなり新生児誘拐から始まる。最初は主人公の名前も出てこない。主人公の友人から「キワちゃん」と呼びかけられ、名前に「キワ」がつくらしいと分かる程度。主人公の一人称でストーリーは展開する。主人公が「薫」と名付けた新生児との逃亡生活が綴られる。身元を詮索しない曰わくがありそうな高齢の女性、宗教まがいの自然食品販売団体「エンジェルホーム」、更にはエンジェルホームで知り合った久美子の実家の小豆島に身を寄せる。薫も4歳に成長し、小豆島でようやくささやかな平穏の暮らしが営めるようになったのに、いきなり警察に逮捕され、主人公のモノローグは終了する。