連載:読書感想文

2、『明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子』(太田治子著)は、娘の万里子にも話したいと

『明るい方へ 父・太宰治と母・太田静子』 太田治子著 朝日文庫 2012年6月30日発行
ー昭和22年11月12日、私は神奈川県足柄下郡下曽我で生まれた。
 私の父・太宰治が初めて下曽我駅に降りた時は、もつ夕暮れが近かった。昭和19年の1月のことである。母・太田静子は母親のきさと二人疎開してきてまだまもなかった。
 大学生の娘の万里子が歩いていた。
「小説と現実を一緒にするのはおかしい」という人がいる。しかし太宰治は、小説を現実につなげて文学に殉じた小説家であった。小説と現実が同じものでなくてはいけないと念じていたのだと思う。
「こいしいひとの子を生み、