浅田次郎「神坐す山の物語」

 昔から山は神の領域として信仰されてきた。御岳山は東京都ながらも今でも豊かな自然が残り、御岳山詣での御師の宿坊も健在。本書は御岳山山上の武蔵御嶽神社の神官を代々務める御師の家で起こる数々の不思議な物語。時は太平洋戦争終戦後の昭和の時代。曽祖父は狐祓いで聞こえた験力を持つ御師であった。まだ子どもの私も御師の血を引き、人には見えないもの、例えば霊、が見える。「神上りましし伯父」では、まだ伯父の訃報がもたらせる前から私は伯父の霊が別れを告げに来たので、伯父の死を知っていた。

 山に住み、神に仕える一族は特殊だ。代々、家統の純血を守るため近親婚が続いて来たので