村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」

 村上春樹の小説を読んでいるとビールが飲みたくなる。サンドウィッチも食べたくなる。作品を読んでいる間はまさに「ワンダーランド」で一緒に過ごしているように没入感がある。だから、作品を読み終わると、主人公や登場人物たちと別れねばならず、寂しくなる。そんな魅力が村上春樹の作品にはある。ストーリーは奇妙なエレベーターに乗り込むところから始まる。オフィスビルからいきなり異次元の世界に展開する。「やみくろ」に襲われると言われて初めは面食らっていたが、いつの間にか実在する敵として認識し、姿は見ていないがその気配を感じるようになる。

 「世界の終り」でもなぜそこに辿り