連載:例句

大須賀乙字と角川源義

◆窓外に黒ずむ山や扇置く 源義(昭和八年)

石田波郷は『ロダンの首』の跋文で、
このやうに最初から完熟してゐる作者も珍しい。(中略)単に洒落た構図の句と言ひ棄てられさうな句だが、こゝにはる人生の一点が動きを止めて定着されてゐるやうなところがある。
と述べている。「窓外に黒ずむ山」とは、立山連峰。大須賀乙字の言う「二句一章」論を実践した初期の代表句。俳句の形を生涯大切にした源義の片鱗が現れている。

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