連載:例句

二句一章。

異場面の二句一章
  降る雪や明治は遠くなりにけり    中村草田男
  万緑や死は一弾を以て足る      上田五千石
  曼珠沙華どれも腹出し秩父の子    金子兜太

    同一場面の二句一章
  夏の河赤き鉄鎖のはし浸る      山口誓子
  神田川祭の中を流れけり        久保田万太郎
  くもの絲一すぢよぎる百合の前    高野素十


大須賀乙字の俳句

凩に木の股童子泣く夜かな
寒中の毛衣磨れば火の走る
干足袋の日南に氷る寒さかな
漆山染まりて鮎の落ちにけり
火遊びの我れ一人ゐしは枯野かな
砂丘はなるる月のはやさよ月見草
雁鳴い