連載:読書

「順番なんて関係ない:『後悔病棟」

吉村昭の『関東大震災』を読んでいる時、あまりにも凄惨な場面の連続で、もう一冊「甘い」本を同時進行で読んでいた。

『後悔病棟』(垣谷美雨著)だ。去年GOTOトラベルでよく旅に出たが、駅ナカの本屋で買った小学館文庫だ。帯の「もしもこの歳で死ぬと知っていたら」、「人生はやり直したいことばかり」、「過去に戻れる聴診器をめぐるヒューマンドラマ」が目を引いたからだが、決定打は『累計15万部』だ。


「これまで自分が思っていた母は、常に毅然としていて、自分自身にも娘の私にも厳しかった。尊敬に値するけれど、母親としての柔らかさや温かさが感じられなくて、幼い頃から近く