梓澤 要 の 正倉院の秘宝

★3.5 現代ものだが、内容は古代史ミステリー。
東京の月刊誌『古美術薫風」の編集者・加納理江子は、かって先輩と訪れたことのある南大和の小さな庵寺で、封印された厨子の中に古仏を発見した。仏像の特徴からそれは天平時代の作ではないかと思われた。そして、その仏像は古風な直刀を抱えていた。厨子の中には碧瑠璃の玉でできた数珠も収められている。理江子の頭に閃くものがある。もしやこの直刀はあの失われた「黒作懸佩刀(くろつくりのかけはきのたち)」ではないかと。

なぜ、こんな金剛の山奥の寺にあるのか。明治の初期、廃仏毀釈の嵐が吹き荒れた頃、近隣の寺々から無数の仏像がこの