甦った「人形佐七捕物帳」の全貌⑩

 横溝正史の「完本 人形佐七捕物帳(十)」を読了した。著者は、大正期から戦後にかけて活躍した推理小説作家であり、探偵金田一耕助を主人公とした一連の探偵小説は今でも広く読み継がれている。本書は、著者の代表的捕物作品である、「人形佐七捕物帳」の全180篇を発表順に収録した全10巻の全集の第十巻である。
 人形佐七捕物帳シリーズの初出は昭和13年の「羽子板娘」であるが、著者は改定時や全集の発行時、旧かなから新かなへの改定時などに作品の改定を繰り返してきた。その中には、後に人気の出てきた子分の辰と豆六の登場場面を後から書き加えるなどの大幅改定があったため、作品数