『秋待ち喫茶』

『こんな店、あったかな?』
『多分、夏までは、なかった」
『じゃあ、新しい店なんだね」
『いや、そうでもないみたいだけどね」
『そうでもないって、どういう意味?」
『入ってみれば、わかるんじゃない』
『そうだね、ちょっと甘いもの食べたいって思ってたから』
『あなたって、相変わらず甘党なのね』
『そう、これは、治らない』
『仕方ないから、付き合うわ』
ふたりを迎えたカウンターの中のママの顔が、懐かしそうに微笑んでいる。
やっと、待っていた秋になったのだ。

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