冷たい海鼠の握り美味しくて 



 一点の刃こぼれもなし寒三日月  塚腰杜尚

 寒三日月うすうすまろし父を恋ふ  堀口星眠 営巣期

 冬三日月ひたと機窓に深空航く  富安風生

 飛ぶ雲の寒三日月にかゝりたる  森 みち子

 洩るる灯のそこより前後なき深雪  安東次男 裏山

 駅にだけ人をり深雪村眠る  嶋田摩耶子

 卯の花の深雪咲きして美術館  本宮鼎三

 温泉上りの身の柔らかし深雪の夜  殿村莵絲子 牡 丹

 音といふ音閉ざされし深雪宿  稲畑汀子

 午ちかく雀なき出し深雪かな  原石鼎

 深雪晴庭に雪の堆く  アロマ

 赤ちやんの通つた匂い深雪晴れ  坪内稔